相続時のトラブルは財産の多寡や家族仲に関係なく発生する可能性があり、特に空家などの分けにくい財産がある場合は注意が必要です。遺言書がないと、遺産分割協議には全相続人の合意が必要となり、感情的な対立が表面化するリスクもあります。
財産が少なくてもトラブルの火種となり得るため、空家の処分や相続分の明確化を含め、遺言書を作成することで円滑な相続を実現できます。今回は、家族仲が良くても遺言書が必要な理由と、空家を含む相続財産のトラブルを防ぐ方法を紹介します。
家族円満でも相続トラブルは起こる
遺産分割協議の現実と負担
遺言書がない場合、遺産は「遺産分割協議」で分けることになります。相続人全員が協議に参加し、全員が合意しないと相続手続きは進められません。
特に以下のような状況では、家族仲が良好でもトラブルが生じる可能性があります。
- 生活状況や価値観の違いによる希望のズレ
- 配偶者や兄弟姉妹の配偶者など、実質的に関わる第三者の存在
- 現金化しづらい不動産(空家など)の存在
相続=金銭だけの問題ではなく、感情と価値観の調整という一面もあるため、遺言書があると「故人の意志」として尊重され、協議がスムーズに進む可能性が高くなります。
財産が少なくても争いは起きる
「普通の家庭」の相続こそ要注意
家庭裁判所の統計によれば、相続トラブルに発展した案件のうち約70%が「財産5,000万円以下」のケースです。財産が多い家庭は分けやすく、また専門家と日常的に付き合いがあることから、相続対策も進んでいます。
一方で、空家など分けにくい資産しかない場合には、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 住み慣れた家を誰が相続するかで対立
- 売却して現金化したい相続人と、残しておきたい相続人の意見の食い違い
- 介護や生活援助などで特別な貢献をしたと主張する人が現れる
特に空家は感情的な価値も絡むため、分割が難しくトラブルの火種になりやすいのが実情です。
空家がある場合の相続リスク
分けにくい不動産は争いの元
不動産は現物分割が難しく、特に以下のようなケースでは、遺言書の有無がその後の関係を大きく左右します。
- 財産の大半が空家などの不動産で、現金がほとんどない
- 高齢の配偶者が住み続ける予定だが、他の相続人が現金化を希望
- 空家が管理されず放置されている状態で、処分方法に意見が分かれる
空家を巡る相続問題は、感情と金銭が交差する複雑な問題です。遺言書により「誰に、どのように相続させるか」を明確にしておくことで、相続人の納得感を得やすくなります。
相続トラブルが発生しやすい6つのケース
以下のような家庭状況では、遺言書がないとトラブルが発生しやすくなります。
- 子どもがいない夫婦:配偶者と故人の兄弟姉妹が相続人となる
- 離婚歴があり、前配偶者との間に子がいる:長年疎遠でも相続権はある
- 認知症など判断能力のない相続人がいる:家庭裁判所で後見人の選任が必要
- 法定相続人以外に財産を渡したい人がいる:遺言書がないと実現できない
- 内縁関係の配偶者がいる:婚姻届けを出していなければ法定相続権はない
- 介護や家業など特別な貢献をした人がいる:他の相続人との調整が難しい
これらに該当する場合は、相続人間の合意形成が難しくなる可能性が高いため、遺言書の作成が強く推奨されます。
空家の処分を巡る意見の相違
相続対象に空家がある場合、次のような意見の衝突がよく見られます。
- 長男:「家は残して思い出を大切にしたい」
- 次男:「空家は売却して現金化してほしい」
- 配偶者:「住み慣れた家に住み続けたい」
物理的に分けられない財産は、感情的な紛争に直結しやすいため、具体的な分割方法を事前に遺言書で示しておくと、相続後の混乱を防げます。
遺言書がもたらす安心と明確化
家族への「最後の思いやり」
遺言書は、相続人の間で争いが起きないようにするだけでなく、以下のような利点もあります。
- 遺産の分け方を明確にできる
- 空家の処分方針を指示できる
- 特定の人に感謝の意を伝えられる
- 相続税の申告準備がしやすくなる
- 相続手続きのスピードが大幅に向上する
遺言書は、残された家族の負担を軽減し、相続後の生活を守るための有効な手段です。
家族仲が良い今だからこそ遺言書を
「うちは揉めるような家じゃない」と考える方ほど、相続が他人事になりがちです。しかし、実際には、親がいなくなった後に関係がぎくしゃくする家庭も多く見られます。
空家をはじめとする不動産がある場合や、相続人の構成が複雑な家庭では、遺言書の有無がその後の家族関係に大きく影響します。
まとめ
相続は、家族の思いや関係性が問われる繊細な問題です。家族が円満である今こそ、遺言書という形で自分の意志を残し、空家や財産の分配方法を明確にしておくことが重要です。
遺言書を準備することは、「家族に迷惑をかけたくない」という思いを形にする、最後の優しさです。将来のトラブルを未然に防ぐためにも、早めに対策を講じておきましょう。


