障がい者が相続人となる場合、相続手続きは意思能力の有無により異なります。特に空家を含む不動産の相続では、意思能力に応じた対応が必要となり、後見制度や特別代理人の選任が求められる場合があります。
また、障がい者には相続税の軽減措置も用意されており、事前の対策によって生活の安定を図ることができます。本記事では、障がい者が相続人となった場合の空家相続に関する手続きと生前対策について詳しく解説します。
障がい者が相続人の場合の空家相続の基本的な考え方
空家を含む不動産を相続する場合、相続人の意思能力が手続きに大きく影響します。障がい者が相続人となるケースでは、意思能力の有無によって必要な法的措置や選任される人物が変わります。
意思能力がある障がい者による空家相続
意思能力が十分にある障がい者は、他の相続人と同様に遺産分割協議に参加し、空家を含む相続財産の取得手続きを行うことができます。この場合、成年後見人や特別代理人の選任は不要で、スムーズな手続きが可能です。
たとえば、空家の売却や利用方法についても本人の意思で決定でき、相続登記や不動産登記の申請も問題なく行えます。
意思能力が不十分な場合:成年後見制度の活用
障がい者に意思能力が不十分と判断される場合は、成年後見人を家庭裁判所に申し立てて選任する必要があります。成年後見人は、本人に代わって遺産分割協議に参加し、空家の相続や処分に関する判断を行います。
空家を売却する場合や管理を委託する場合も、成年後見人がその内容を判断・承認する形になります。成年後見制度では、後見人が継続的に財産の管理を行い、毎年家庭裁判所に報告義務があります。
空家相続に関連する特別代理人の選任
意思能力がなく、かつ成年後見制度を利用していない場合や一時的な手続きのみを必要とする場合には、特別代理人を選任することがあります。特別代理人は、遺産分割協議や不動産登記など、空家を含む相続手続きに必要な行為を一時的に代理します。
特別代理人は利害関係のない第三者が選ばれ、手続き終了とともにその任務も終了します。
法定相続分による空家相続の対応方法
障がい者の意思能力が不十分であり、かつ遺言がない場合、法定相続分に基づいて空家を相続するという方法もあります。この場合、遺産分割協議は不要となり、成年後見人や特別代理人の選任も省略できます。
ただし、共有名義となった空家を売却する際には、売却手続きを行うために特別代理人や成年後見人の関与が再度必要になる場合があります。
障がい者の意思能力の判断基準
障がい者の意思能力は、その障がいの種類や等級によって一律に決定されるわけではなく、個別の状況に応じて判断されます。
療育手帳や精神障害者保健福祉手帳に記載されている等級が同じでも、意思能力の有無は人によって異なるため、実際の手続きにおいては医師の診断や専門家の意見をもとに慎重に判断されます。
相続税における障がい者控除と空家の関係
障がい者が空家を相続した場合でも、相続税の軽減措置である「障害者控除」を適用することで、税負担を大きく抑えることが可能です。
障害者控除の概要
障害者控除は、以下の条件を満たす場合に適用されます。
- 相続人が85歳未満の障がい者である
- 相続人が法定相続人である
- 日本国内に住所がある
控除額の計算方法は以下のとおりです。
- 一般障害者:満85歳までの年数 × 10万円
- 特別障害者:満85歳までの年数 × 20万円
(1年未満は切り上げ)
控除額を使いきれないときの対応
障害者控除の額が本人の相続税額を上回る場合、扶養義務者である他の相続人の税額から差し引くことが可能です。扶養義務者が複数いる場合は、控除額の配分について協議が必要になります。
障がい者の生活と空家管理を守るための生前対策
障がい者の生活を守り、空家の放置や相続トラブルを防ぐためには、生前からの備えが重要です。以下の4つの方法が有効とされています。
家族信託の活用
家族信託を活用すれば、障がい者本人の意思能力があるうちに、親が信頼する家族に財産の管理・運用を託すことができます。空家の管理や処分も信託契約で柔軟に対応できます。
親の死後、障がいのある子の生活資金や住居として空家を活用する仕組みを整備できる点も大きなメリットです。
遺言書の作成
遺言書を作成しておくことで、障がいのある子に確実に空家や他の財産を残すことができます。特定の相続人に多くの財産を遺す場合、遺留分に配慮しながらトラブルのない相続設計を行うことが大切です。
任意後見制度の利用
障がいのある子が意思能力を有している場合は、任意後見制度の利用も可能です。あらかじめ信頼できる人を任意後見人に指定することで、本人の生活や財産管理を継続的に支援できます。
負担付き遺贈の活用
負担付き遺贈とは、障がい者の生活支援など特定の義務を条件として財産を譲る方法です。例えば、空家の管理や住居提供を条件とすることができます。ただし、義務不履行のリスクや裁判所の関与が発生する可能性もあるため、契約内容には慎重な設計が求められます。
まとめ
障がい者が相続人となる空家相続では、意思能力の有無が手続きの鍵を握ります。成年後見制度や特別代理人の選任を適切に行いながら、相続税の軽減措置を活用することで、障がい者の生活の安定と空家の適切な管理が実現できます。
また、生前の段階で家族信託や遺言書などを活用することで、親亡き後の不安を軽減し、相続トラブルを未然に防ぐことが可能です。障がい者の将来と空家の適切な管理のために、早めの対策を講じることが重要です。


