はじめに 街を歩いていると、「相続・許認可・契約書・ビザ申請、何でもご相談ください」という士業の看板を見かけることがあります。一見すると、どんな悩みでも解決してくれそうで頼もしく感じるかもしれません。 しかし、もしあなたが人生を左右するような大きな問題や、事業の命運を分ける手続きを抱えているのなら、私はあえてこうお伝えします。
「『何でもできます』という専門家には、安易に頼まないでください」と。
今回は、専門家選びにおける見落としがちな落とし穴と、私が「何でも屋」であることをやめ、今の専門分野に特化して仕事をしている理由について、私の過去の苦い経験とともにお話しします。
1. 「何でもできる」は、「何の専門家でもない」のと同じ 行政書士が扱うことができる書類は、官公署に提出するものだけでも1万種類を超えると言われています。 これらすべてを完璧にこなし、日々の目まぐるしい法改正や、自治体ごとの細かいローカルルールをすべて追い続けることは、どう考えても人間には不可能です。 つまり、「何でもできます」という看板を掲げているということは、裏を返せば「すべてにおいて広く浅く対応します」と言っているのと同じなのです。
もちろん、表面的な書類を作って役所に提出するだけであれば、広く浅くでも対応できるかもしれません。しかし、実務の現場では、机上の法律知識だけでは対応できない「想定外のトラブル」や「見えないリスク」が必ず潜んでいます。 専門性を深く掘り下げていないと、その落とし穴に気づけず、結果的にお客様を危険に晒してしまう可能性があるのです。
2. 広く浅く対応して葛藤した、私の過去の失敗 偉そうなことを言っていますが、実は私自身も、過去には「依頼された仕事はなんでも引き受けよう」と焦っていた時期がありました。 ご相談があれば、必死に本を読み、役所に通って手探りで書類を作成していました。しかし、毎日違う分野の法律と格闘する中で、ある日強烈な違和感と葛藤に襲われたのです。
「私は、お客様の本当の不安を解消できているのだろうか?」
お客様が専門家にお金を払うのは、単に「書類を代筆してほしいから」ではありません。複雑な手続きや法律の壁に直面し、どうしていいか分からない「不安」を「安心」に変えたいからです。 広く浅く対応している状態では、目の前の手続きをこなすことで精一杯になり、お客様の事業の未来や、人生の背景にまで深く寄り添う余裕がありませんでした。これでは、本当の意味でお客様を守ることはできないと痛感したのです。
3. 「選ばれる理由」は、特定の悩みを深く解決すること そこで私は、「何でも屋」の看板を下ろし、「やらないこと」を決断しました。 自分のこれまでの現場経験や知見が最も活き、心からお客様の力になれる分野にだけ、すべてのエネルギーを集中させることにしたのです。
専門分野を極限まで絞り込むことで、見える世界は劇的に変わりました。 その分野における最新の動向、過去の失敗事例、そして「どこにリスクが潜んでいるか」という現場のリアルな勘所が手に取るように分かるようになったのです。 これにより、お客様から相談を受けた際、ただ言われた通りの手続きをするのではなく、「このままだと数年後にこういう問題が起きる可能性がありますよ。今のうちにこうしておきましょう」と、先回りしてリスクを潰す提案ができるようになりました。 これこそが、お客様に真の「安心」を提供し、「あなたに頼んでよかった」と心から言っていただける理由だと確信しています。
4. できないことは「信頼できるプロ」に繋ぐという責任 専門を絞るということは、自分の専門外のご相談をお断りしなければならない場面も出てくるということです。 しかし、私はただ「できません」と突き放すことはしません。 私には、税理士、司法書士、社会保険労務士、あるいは別の分野に特化した行政書士など、価値観を共有できる信頼できる「プロのネットワーク」があります。
もし私の専門外の相談が来た場合は、その分野の第一線で活躍している専門家を責任もってご紹介します。 「自分一人で抱え込まず、一番確実にお客様の課題を解決できるチームで対応する」。 何でも自分でやろうとするよりも、このスタンスのほうが、結果的にお客様にとって最も安全で、大きなメリットをもたらすからです。
おわりに 「誰に頼むか」で、手に入る未来の安心感は全く違ったものになります。 もしあなたが今、何かの問題で専門家を探しているのなら、「広く何でもやってくれる人」ではなく、「あなたの特定の悩みを誰よりも深く理解し、全力で守り抜いてくれる人」を選んでください。
私はこれからも、自分の専門分野に特化し、ご縁のあったお客様の「安心」を徹底的に守り抜く伴走者であり続けたいと思います。
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