空家を相続したときの売却タイミングと注意点

相続によって取得した空家を放置しておくと、建物の老朽化や管理責任の問題だけでなく、税制上の優遇措置を受けられない可能性も出てきます。相続空家の売却には、「いつ売るか」が大きな分かれ道となります。

本記事では、相続した空家を売却する最適なタイミングと、早期対応の重要性について、税務面・実務面の両方から解説します。

相続空家の売却は「3年以内」が大きな目安

3000万円特別控除が使える期間に注意

相続した空家を売却する際、一定の条件を満たすと「3000万円の譲渡所得特別控除」を利用できます。この制度を活用できれば、譲渡益が最大3000万円まで非課税になります。

ただし、この控除の適用期限は、

「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」

と明確に定められています。たとえば、相続が2022年5月に発生した場合、2025年12月31日までに売却しなければなりません。この期限を過ぎると、特別控除は一切適用されません。

売却準備には、不動産会社との調整、相続登記の完了、内覧対応など一定の時間がかかるため、できる限り早く行動を始めることが重要です。

相続税の取得費加算特例も期間限定

もう一つの重要な特例が「相続税の取得費加算」です。これは、相続によって得た不動産を売却した際に、支払った相続税の一部を不動産の取得費に加算できる制度です。これにより、課税対象となる譲渡益を減らし、税額を抑えることが可能です。

この特例には次の期限が定められています。

「相続税の申告期限の翌日から3年以内」

相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内ですから、この特例を利用できる売却期限は相続開始から約3年10ヶ月以内となります。3000万円特別控除よりは若干余裕がありますが、いずれにしても長期間の猶予があるわけではありません。

空家を放置するリスクは非常に高い

建物の老朽化は早期に進行する

空家は定期的な管理がなければ、急速に老朽化が進みます。特に、湿気や気温の変化により構造材が劣化し、短期間で修繕が必要になるケースも少なくありません。また、雑草の繁茂や不法侵入など、周囲の住民にも悪影響を及ぼすことがあります。

老朽化が進めば進むほど、買い手がつきにくくなるばかりか、建物を解体して更地にしてからでないと売れないといった事態も起こりえます。その結果、解体費用が発生し、売却益が減少することにもつながります。

災害や事故による責任の可能性

空家が自然災害によって倒壊した場合、所有者としての管理責任が問われることがあります。瓦や壁材の落下、外壁の崩落などで近隣住民に損害が出た場合、賠償責任を負うリスクもあります。

さらに、放置された空家は犯罪の温床となるケースもあり、近隣住民とのトラブルにつながることもあります。これらのリスクを回避するためにも、相続した空家は早めに処分することが賢明です。

相続人のトラブルが売却を妨げることも

遺産分割協議前は全員の同意が必要

相続によって不動産を取得した場合、相続人全員が共有者となるため、遺産分割協議が完了するまでは不動産を勝手に売却することはできません。協議の段階で1人でも売却に反対する相続人がいれば、売却手続きに進むことは困難になります。

こうした状況を避けるためには、相続開始後できるだけ早く相続人全員で話し合い、明確な合意を形成することが不可欠です。

遺産分割協議後の反対には柔軟に対応

遺産分割協議が成立し、不動産の名義が単独相続人に変更されていれば、売却は原則としてその人の自由です。ただし、「換価分割(売却して現金を分配する方法)」を採用している場合は、売却代金の分配時に揉めることがあります。

売却に関して意見が割れた場合は、相手の主張に耳を傾けたうえで、妥協点を探る姿勢が重要です。感情面の問題が絡むことも多いため、冷静な対話がカギとなります。

相続した空家は早めの判断と行動が必要

相続した空家は、「使う」「貸す」「売る」「解体する」など、早い段階で方向性を決めておくことが肝要です。特に、税制上の特例が活用できる「3年以内の売却」を一つの目安として、スケジュールを立てるべきです。

また、近年では空家対策に関する法制度も強化されつつあり、放置された空家に対しては固定資産税の増額や、行政代執行による解体措置などが行われる可能性もあります。空家の放置には何のメリットもありません。

まとめ:相続空家の売却は「早め」が鉄則

  • 空家を相続したら、できるだけ早く売却の検討を始める。
  • 3000万円控除や取得費加算などの特例は「3年以内」が目安。
  • 放置による老朽化や管理リスクは経済的負担を大きくする。
  • 相続人の合意形成が売却のスムーズな進行に直結する。

相続した空家は、適切なタイミングで売却することで、税負担を軽減し、トラブルを回避することができます。放置せず、責任ある対応を心がけましょう。