相続人がいない場合に発生する空家問題は、放置すれば近隣への悪影響や手続きの煩雑さを招きます。相続放棄や相続人不在のケースでは、最終的に空家は国に帰属しますが、それまでには一定の管理義務や手続きが必要です。
本記事では、相続人がいない空家の法的な扱いと、生前にできる主な対策(売却、解体、リバースモーゲージ、リースバック)について解説します。自分の死後に空家を残さないためには、早めの対策と専門家への相談が不可欠です。
相続人がいない空家とは何か?
相続人不在となる主なケース
相続人がいない、または事実上いないとされる空家には、主に次の3つのケースがあります。
ケース1:法定相続人がいない
配偶者や子、兄弟姉妹などの法定相続人がすでに亡くなっているか、初めから存在しない場合、相続人がいない状態となります。また、事実婚のパートナーは法律上の相続権がないため、遺言書を用意していなければ相続できません。
ケース2:全員が相続放棄した
相続人が存在していても、全員が相続を放棄することにより、結果的に相続人がいなくなる場合もあります。地方にある管理困難な不動産や、負債が大きい遺産が対象のケースでよく見られます。
ケース3:相続人と連絡が取れない
稀ではありますが、相続人が所在不明で連絡がつかない場合もあります。このような場合には、家庭裁判所が不在者財産管理人を選任し、その者が財産の管理を代行します。
相続人がいない空家の法的扱い
最終的には国に帰属
民法第959条により、相続人がいない遺産は国庫に帰属します。これには不動産だけでなく、預貯金やその他の財産も含まれます。なお、相続放棄によって相続人がいない状態になった場合でも、手続きなしに自動的に国の所有になるわけではありません。
相続放棄後も管理義務が生じる
相続人が相続放棄をした場合でも、相続財産清算人が選ばれるまでは、空家の管理義務が発生します。この間に発生した損害やトラブルに関しては、元相続人が責任を負う可能性もあるため注意が必要です。
生前にできる空家対策
将来空家になる可能性がある不動産については、生前に対処しておくことで相続人の負担を軽減できます。以下のような選択肢があります。
自分の代で売却または解体
空家になることが予想される場合、元気なうちに売却または解体しておく方法が最も確実です。近年では、退職後に都市部へ移住するシニア層が増えており、住まいの見直しを図る人も少なくありません。
注意点:家屋を解体して更地にすると、固定資産税の軽減措置がなくなり、税負担が増える可能性があります。老後資金とのバランスを見ながら慎重に検討しましょう。
リバースモーゲージの活用
自宅を担保にして老後の生活資金を借り入れ、生存中は利息のみを返済し、死後に不動産を売却して完済する仕組みです。配偶者がいる場合は連帯債務で契約することにより、配偶者が住み続けることも可能です。
メリット:老後資金の確保と空家化防止が同時に図れる
デメリット:年齢制限や金利の変動リスク、担保評価の制限などがあるため、事前にしっかりと制度を理解する必要があります。
リースバックによる資金確保
不動産会社に自宅を売却し、その後も賃貸契約を結んで住み続ける方法です。まとまった資金を確保しつつ、住環境を維持できるため、近年注目されています。
メリット:売却後も自宅に住み続けられる、住宅ローンの返済が不要になる
デメリット:売却価格は市場価格の6〜8割に抑えられ、家賃が周辺相場よりも高くなる傾向があります
相談できる主な窓口
空家や相続に関する手続きを進める上で、適切なアドバイスを受けることは重要です。次のような専門家に相談することが可能です。
- 弁護士(遺言書作成・法的トラブル対応)
- 司法書士(登記手続き・相続放棄のサポート)
- 税理士(相続税対策・財産評価)
- 不動産会社(売却やリースバックの相談)
- 自治体窓口(空家対策支援制度の案内)
まとめ:空家を残さないために今からできる準備
将来的に空家になるリスクを減らすためには、健康なうちから終活の一環として不動産の整理を検討することが重要です。特に相続人がいない、または相続を希望しないとわかっている場合は、早期に売却や制度利用の検討を進めておくと、子孫や地域社会への迷惑を防ぐことができます。
空家や相続に関する判断は、個々の状況や財産の内容によって大きく異なります。専門家と相談しながら、自分に合った最適な対処法を選びましょう。


