相続によって取得した不動産が空家となった場合、管理や税負担の問題から売却を検討するケースが多くあります。売却によって利益が出れば譲渡所得税が発生しますが、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の3000万円特別控除」という特例を使えば、大きな節税効果が得られます。
以前は、被相続人が老人ホームに入居していた場合、この特例が使えないケースもありましたが、税制改正により一定条件を満たせば適用可能となりました。本記事では、老人ホーム入居による空家の相続特例と3000万円控除の最新の適用条件について詳しく解説します。
相続した空家の売却と譲渡所得税
不動産を相続した場合、使用されていない状態が続けば空家となり、管理・維持費用が相続人にとって大きな負担になります。そのため、空家となった相続不動産を売却して資産整理を図るケースが増えています。
ただし、売却によって譲渡益(利益)が出た場合には、譲渡所得税が課税される点に注意が必要です。多くの相続人が相続税の対策だけに目が向きがちですが、譲渡所得税も無視できない負担となります。
空家に係る譲渡所得の3000万円控除特例とは
相続した空家を売却する場合、一定の条件を満たすと「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」が適用でき、譲渡所得から最大3000万円まで控除することができます。この特例は、空家の相続とその処分を後押しする制度として注目されています。
適用できれば譲渡所得税を大幅に軽減できるため、多くの相続人にとって有利な制度です。ただし、特例の適用にはいくつかの厳格な要件があります。
特例の最大の壁「被相続人以外が居住していないこと」
この特例を受けるための要件のひとつに、「相続の開始直前まで被相続人以外が居住していないこと」があります。これは、被相続人が生前その家に一人で住んでいたことを意味します。
たとえば、相続開始前に子や親族が同居していたり、他人に貸していた場合は、この特例を受けられません。また、被相続人が自宅を離れて老人ホームに入居していた場合も、「空家となったタイミング」が問題になっていました。
老人ホーム入居中の空家は特例対象外だった
かつては、被相続人が亡くなる前に老人ホームなどに入所していた場合、その自宅は「被相続人が居住していた家屋」とは見なされず、空家の相続特例の対象外とされていました。
この運用は、現実の介護事情に即していないとの批判がありました。高齢化が進む中、在宅介護が難しくなった場合に施設入所が選ばれるのは自然な流れです。それにもかかわらず、施設入所によって相続税の優遇が受けられないのは、制度趣旨に反するとされてきました。
税制改正で老人ホーム入所者の空家も対象に
こうした実情をふまえ、制度は見直されました。現在では、被相続人が老人ホームなどに入居していた場合でも、以下の条件を満たせば空家特例の対象とされるようになりました。
この改正により、介護と相続対策の両立が図りやすくなり、相続後の不動産売却による税負担軽減が実現しやすくなりました。
老人ホーム入所中の空家に3000万円控除が適用される要件
要件1:要介護または要支援認定の取得
被相続人が、介護保険法に基づいて要介護認定または要支援認定を受けていたことが前提です。障害者の場合は、障害支援区分の認定が必要です。
要件2:対象施設に入所していたこと
対象となる施設は法律で明確に定められており、以下のような施設が該当します:
- 特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、有料老人ホーム、軽費老人ホーム、認知症対応型グループホーム
- 介護老人保健施設、介護医療院
- サービス付き高齢者向け住宅(ただし有料老人ホームを除く)
- 障害者支援施設や共同生活援助施設(一定の支援を受けている場合)
要件3:住宅が他人に使用されていないこと
老人ホーム入所後も、その住宅が他人に賃貸されていたり、他の家族が住んでいた場合には特例は適用されません。あくまで「空家」として維持されていたことが必要です。
空家の相続特例を活用するための実務的な注意点
特例を受けるためには、要件を満たしていることを証明するための書類を整えておく必要があります。以下の書類が代表的です:
- 要介護認定通知書や介護保険証
- 老人ホーム等との入所契約書
- 建物の使用状況を示す書類(賃貸契約がないことの証明など)
これらを相続税申告や譲渡所得申告の際に提出することで、特例適用の根拠が明確になります。
相続と空家の問題を解決する税制の活用
空家となった相続不動産を適切に売却し、税負担を軽減することは、資産管理の面でも重要なポイントです。制度を正しく理解し、早めに準備しておくことで、相続後のトラブルやコストを最小限に抑えることができます。
特に、親が高齢になり施設入所を検討する段階から、将来の空家と相続を見据えて計画を立てることが、結果的に家族全体の安心にもつながります。
まとめ:空家の相続と老人ホーム入所に備える
相続によって取得した空家の売却時には、3000万円の譲渡所得控除という大きな節税メリットがあります。老人ホームに入所していた場合でも、一定の条件を満たせばこの特例を活用できます。
相続と空家対策を両立するためには、制度の要件を正しく理解し、被相続人の介護状況や不動産の使用状況を事前に整理しておくことが重要です。空家と相続の問題に直面する前に、制度を活用できるよう準備を進めておくことをおすすめします。


