「相続の設計図」がある人は何から始めてる?実家を“お荷物”にしないための最初の一歩

「相続が発生したけれど、実家の土地と建物をどう分ければいいか分からない」

不動産会社を経営し、行政書士事務所を運営している私の元には、日々こうした切実なご相談が寄せられます。

結論から申し上げます。相続、特に「不動産」が絡む相続を円滑に進めるために最も重要なのは、難しい法律の知識でも、高額な専門家への依頼でもありません。「現状の正確な把握」と、それを視覚化するための「1本の線」です。

なぜ、不動産の相続はこれほどこじれるのか?

理由は極めてシンプル。「不動産は、現金のようにきれいに等分できないから」です。

「とりあえず、きょうだい3人で均等に分けよう」と安易に共有名義にしてしまい、数年後に売却したくても全員の同意が得られず塩漬けになる。あるいは「誰が実家を継ぐか」で意見が割れ、話し合いが面倒になって何年も放置された結果、実家が空き家となって固定資産税だけが引き落とされ続ける……。

こうした悲劇を、私はプロの現場で嫌というほど見てきました。

多くの人は「相続が起きてから、とりあえず不動産会社や役所に相談に行く」という行き当たりばったりの行動をとります。しかし、事前の整理がないまま「 How (どう手続きするか)」に飛びつくと、複雑な不動産の世界では必ず迷子になります。

面倒くさがりだからこそ、私は「仕組み」にこだわる

偉そうなことを言っていますが、私自身は非常に大雑把で飽きっぽく、集中力も人一倍ありません。

ハウスメーカー勤務を経て不動産業界一筋でやってきましたが、若い頃は力技で仕事をこなそうとして何度も痛い目を見ました。行政書士試験に挑戦した1年目、大手予備校に通いながら不合格だったのも、「自分の現在の実力」を客観的に分析せず、とりあえずカリキュラムをこなしていたからです。

2年目に自分の状況を徹底的に数値化・システム化して独学に切り替えてからは、宅建や賃貸不動産経営管理士の一発合格も含め、驚くほど効率的に成果を出せるようになりました。

私のような「面倒くさがり」が大きな問題(相続や試験)をクリアするには、強い意志ではなく「強制的に頭が整理される仕組み」が必要なのです。

机の上に「1本の縦線」を引く

では、不動産相続の設計図をスマートに描いている人は、具体的に何から始めているのでしょうか。

彼らが最初にやるのは、ノートを広げて真んちに「1本の縦線」を引くことです。この線が、混乱(カオス)と秩序を分ける境界線になります。

  • 線の左側(現在地):いま分かっている不動産の事実
    • 相続対象となる不動産はどこに、何があるか(自宅、地方の土地など)。
    • その不動産は、いま誰の名義になっているか(実は祖父の名義のままだった、というケースは非常に多いです)。
    • その土地の「およその価値(査定額)」はいくらか。
  • 線の右側(目的地):家族が望むこれからの未来
    • 実家を売却して、現金にしてきれいに分けたいのか。
    • 誰かがそのまま住み続けたいのか。
    • 将来的に賃貸として活用したいのか。

この左右を並べることで、初めて「名義を書き換えるための戸籍謄本を集める」「まずは不動産の査定をプロに依頼する」といった、今すぐやるべき具体的なアクション(ギャップを埋める作業)が明確になります。

頭の中だけで「実家をどうしよう……」と悩んでいると、問題がとてつもなく巨大な壁に見えてきます。しかし、線を1本引いて「文字」と「数字」に落とし込むだけで、やるべきことは驚くほどシンプルになります。

私が禁煙・禁酒に成功し、朝型の規則正しい生活にシフトできたのも、全く同じアプローチです。自分の24時間を線引きして可視化し、ボトルネックを排除する仕組みを作ったからに過ぎません。

まずは、事実を1つ書き出すことから

不動産の相続対策や、これからの人生設計を「最初から完璧にやろう」と意気込む必要はありません。完璧を求めると、人間は面倒になって行動を後回しにします。

まずは手元のメモ帳に、1本の線を引いてみる。そして、分かっている事実(例えば「実家の住所」など)を左側に1つだけ書き出してみてください。

その小さな一歩が、数年後の家族の笑顔と財産を守る「相続の設計図」の確実な始まりになります。

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